double contract 第6話 +++ CAST セイ/sei/音成ねね様 クロム/crom/飛鷺銀様 シギ/sigi/池田奨様 リオン/rion/流月翼様 ウィリス/whilis/高野ぱぐ様 ルカ/ruca/廣川有希様 ザナフ/zanafu/本諏訪壱護様 エリア11の男・1/aria1/神樹桃也様 (二役の為、できる限り演じ分けで御願いします。こちらはがっしりとした男のイメージで、声は低め) エリア11の男・2/aria2/鮎津田軸様 エリア11の男・3/aria3/神樹桃也様(こちらは1よりも、やや若い声の青年のイメージで) +++ +補足 【 】内はただの読み方です。 ( )は演じる上での指定になります。 途中で出てくる、セイM、のMはモノローグを表しています。 (お手数ですが、台詞番号_sei_m と保存お願い致します) ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ○ クロムの家・部屋 パラパラ、と本をめくる音。 001_セイ「……契約、ってあの〜……」(不安げに) 002_セイM「 さっきからブルーベックさんは、黙々と本を読んでる。ちょっと前に部屋を出て、 持ってきた本 」 パタン、と本を閉じる。 003_クロム「何年かぶりの契約だからすっかり忘れていたが大丈夫だ、思い出した」 004_セイ「は……?」 005_クロム「場所はこの部屋でいいか……。始めるぞ、お前名前は」 006_セイ「えっ、セイ……セイ・橘・ルミナリエ、です。あの、契約ってコントラクター取引の際の 一般契約みたいな物ですか……?」 007_クロム「違う。……タチバナ?珍しい名前だな、いや、それよりも発音しにくい。……まぁ、 いい(ここで、ス、とひとつ息を吸う)……我【われ】、契約せしは“ クロム・グランヴィ ス・ブルーベック ”。これより“ 名【な】の契約 ”の儀【ぎ】を行う……請【う】けし 者の名は“ セイ・橘・ルミナリエ ”」 バチィッ・・・!、と電流が駆け巡るような音。 2人に痛みが走る、特にクロムのダメージが大きい。 008_セイ「!!」 009_クロム「ッ!?」 010_セイ「……な、何ですか、今の……っ」 011_クロム「くっ……、貴様、この俺に嘘を教えたな……」 012_「えっ?」 013_「……名前だ。本名を言え!儀が失敗しただろうが!」 014_セイ「ほ、本名ですよ…っ」 015_クロム「……人を馬鹿にしてるのか……?事実、儀は失敗した、それが何よりの証拠だ」 016_セイ「…………あ、もしかして……え、えぇと、ごめんなさい、本名じゃなかったです…と いうか本名知らない場合はどうしたら……」 017_「…………お前、孤児【こじ】か何かか」 018_セイ「……あー、いえ……、まぁ、似たようなものなんですけど……」 019_セイM「 さすがに……会ったばかりの人間に、“ 小さい頃、記憶喪失になりまして ” なんて話できないよね…… 」 020_クロム「……しょうがない、面倒だが血の契約にするか……手を出せ」 021_セイ「え、あ、は、はい」 022_クロム「片手でいい」 クロムはおもむろに机の中から何かを取り出す。小型のナイフ。 023_セイ「?ナイフなんか取り出して……何か切るんですか?」 024_クロム「自分で自分の指を切れ」 しばしの間。 025_セイ「せ……っ、せせ切断なんてそんな……っ!」 026_クロム「馬鹿かお前。指の先腹【さきばら】少しでいい。血が必要なんでな」 027_セイ「ぼ、僕、血ダメなんですよっ。その上自分で切るだなんて、お、恐ろしい事……」 028_クロム「四の五の言わず、さっさと出せ」 029_セイ「な、まさか……」 030_クロム「俺が切る」 031_セイ「――――――〜〜〜っ!!」 032_クロム「妹がさらわれた、とか言ってたな。妹と少しの血とどっちが大事だ」 033_セイ「い……妹です。もちろん」 034_クロム「それなら我慢しろ」 035_セイ「ぅ……うぅ……」 スッ、薄くナイフが入る。 036_セイM「 鋭い痛みが、人差し指に浅く入る。浮き上がってきた血を、ブルーベックさんが すくって自分の手にのせる…………血……血が……頭がグラグラする……何でだろう、昔から 少しでも血を見ると具合が悪くなる……なぜだかはよくわからない、記憶を失う前に何かあっ たのだろうか…… 」 037_クロム「額【ひたい】と首と胸、どこがいい」 しばしの間。 038_セイ「……は?」 039_セイM「 額と首と胸、が……な、何……? 」 040_クロム「これから行う儀は“ 血の契約 ”により、この血で相手の身体に所有【しょゆう】 の印【いん】を書く必要がある。そしてこの契約をしない限り、依頼は受けない」 041_セイ「は、はぁ……でも何で、その3つなんですか?えと、あと、これって何の為の契約な んでしょう……」 042_クロム「「または、脳・動脈の集結・心臓とも言う。契約中【ちゅう】に無理矢理術【じゅ つ】を外そうとすると、そこが吹っ飛ぶ。契約内容は後々【のちのち】言う」 043_セイM「 つまりは、確実に死ぬ場所…… 」 044_セイ「そ、そんな……」 045_セイM「 そんな、悪魔との契約みたいな……! 」 046_クロム「もちろん外そうとしなければ何も起こらない。日常の生活ができる。さぁ、どこだ、 早くしろ」 047_セイM「……様【よう】は、抵抗しなければいい……今は迷っている暇はない。一刻【いっ こく】も早く助けに行かないと、逆にルカの命が危ない……! 」 048_セイ「じゃ……、じゃあ……首で」 049_クロム「首か。理由【りゆう】はあるか?」 050_セイ「の、脳とか心臓だと、もしもの時はすぐ死んじゃいそうじゃないですか」 051_クロム「……首は裂きどころが悪ければ、その分かなり苦しんで死ぬがな」 052_セイ「うっ」 053_クロム「この血で紋【もん】を書く。少し襟元【えりもと】を開けろ」 054_セイ「あ、はいっ」 055_クロム「……刻々【こくこく】と、過ぎ去りし往【ゆ】く時よ……遍【あまね】く躍動【や くどう】、浸【ひた】りし静寂【せいじゃく】、その術【すべ】……。――――――!?」 ボゥ、とあがった突然の光にクロムが驚く。 ○ スカルローク中央部の森 ザワザワ、とゆっくりと柔らかく揺れる木々。 平和に、小鳥の鳴き声が聞こえる。 056_シギ「―――!」 登っていた大木から飛び降り、ストッ、と着地。駆け出す。 057_シギ「リー!リーリーリーリーリー!!」 058_リオン「……ふぇ?」(半分寝ぼけながら) シギが駆けて来る。 059_リオン「あ、しーちゃん……ねぇ、今あれに呼ばれたような気が……」 ガッ、ビタンッ!、と派手に石につまづいてズッ転ぶシギ。 060_リオン「し、しーちゃん!だ、大丈夫……っ?」 061_シギ「…ぅ……うぐ……ぐぐぐ……ううぅ……」(泣きそうだけど我慢) 062_リオン「し、しーちゃん……っ」 がばっ、とシギが起き上がる。 063_シギ「……リー!今ってかさっき何か感じなかった?呼ばれなかった!?」 064_リオン「う、うん。やっぱり気のせいじゃなかったんだね……っ」 065_シギ「気のせい?まっさか!リー、ご主人様がもうすぐあれを呼び起こすんだー!!」(と ても嬉しそうに) 066_リオン「確かあっちの方からだよね」 067_シギ「うん、あっちだっ」 068_シギ 068_リオン「東【ひがし】」(ふたりの声がハモる) 069_リオン「ふふ」 070_シギ「えへー」 071_リオン「ご主人様に会うの久し振りだね、しーちゃん」 072_シギ「え〜と……じゅう……よん……うん、14年振りだよっ!結構長かったなぁ、元気か なぁ、元気だといーなぁ」 073_リオン「ご主人様に会ったら、ソーヴィさんや山桜桃【ゆすら】さんとか皆【みんな】探し しなきゃだね……っ」 074_シギ「そうそう!スミノフのおっちゃん元気かなぁ〜。おっちゃんの腕にぶら下がって遊ぶ の楽しいから早く見つけないと」 ○ 城下街ルクス・エリア11 複数の足音。ピタリ、と止まる。 075_ウィリス「あっれ……?ねぇ、アトラス君。君も今何か感じなかった?」 アトラスは無言。 076_ウィリス「(ひとつ苦笑してから)全く、君はいつもそうだねえ。今どこかでアレの気配が したんだけど……くやしいなぁ、場所がわかればすぐにでも行くんだよ?……まっ、しょうが ないか、どうせ最後には僕のモノになるんだしね」 077_エリア男・1「ど、どうかしましたか、ベルディグリ様」 078_ウィリス「あぁ、ゴメン、名前呼びづらくない?ウィリスでいいんだよ」 079_エリア男・1「そっ、そんな滅相【めっそう】も無い!エリア全土【ぜんど】のリーダーを 決してそんな風には・・・!」 080_ウィリス「あ、補佐。リーダー補佐ってつけて。補佐。リーダーはこっち、アトラス君なん だからね」 081_エリア男・1「はっ、はい!」 082_ウィリス「あっはは」(愉快そうに笑って下さい) 083_エリア男・1M「 ウィリス・ベルディグリ、そしていまだムッツリと押し黙ったアトラス・ ディアード……対照的な2人だ。しかしそれはそれで逆に目を奪われる。何か、カリスマ的な 要素が2人には存在している…… 」 084_ウィリス「……さてと、そういえば君達、面白い娘【こ】捕まえたか何だかって言ってなか ったっけ?」 085_エリア男・1「は、はい、バールで……あ、エリア22の予定地です。そこで文句つけてき ましてね、ギャーギャーうるせぇんで殺【や】っちまおうかと思ったんすが………」 086_ウィリス「すが……何?」 087_エリア男・1「え〜と……ウチの、エリア11のボスがその女の事…………っあ〜……」 088_ウィリス「何」 089_エリア男・1「……その…………気に入っちまいまして」 ○ エリア11・最奥 090_ルカ「放しなさいよ、このバカ――――――――――――ッ!!!!!」(怒りながら絶叫) 091_エリア男・2「あー、やってらんねぇー………」 092_エリア男・3「あ、お前もそう思う?」 093_エリア男・2「後ろ手と腰まわりに縄。しかも柱につながれててよぉ……」 094_エリア男・3「どう考えても不利な状況なのに……なぁんで、近づけば蹴りを繰り出すわ、 さっきから人を罵倒【ばとう】するわ……」 095_ルカ「あっ、痛ぁっ!あーもー!大体ここドコなのよっ!!もう2日たってんのよっ!!!」 096_エリア男・2「無理矢理動きすぎて逆に縄が締まってるしよぉ……馬鹿だろ」 097_エリア男・3「自分が置かれてる状況わかってないなこりゃ、かなり無謀【むぼう】」 098_ルカ「んもー!!(ため息をひとつ)……お兄ちゃん、心配してるだろうなぁ……」 099_エリア男・2「お、止まった」 100_エリア男・3「くるぞくるぞ」 101_ルカ「帰りたい―――――――――――――――ッ!!!」(再び絶叫) 102_エリア男・2「……さっきからこの繰り返しってどうよ……」 103_エリア男・3「飽きるよなぁ……。…お、ボスだ」 ガツンガツン、と靴底の鉄音を鳴らしてがたいの良い男が向かってくる。 104_ルカ「……うげ。また来たヤダ〜〜〜」 105_ザナフ「お前ら、何も無かったか」 106_エリア男・2「は、はい!変わりありません!」 107_エリア男・2M「 ウチのボス、ザナフ・ガナディ。軍上がりの屈強【くっきょう】な男で、 鍛えられた体躯【たいく】には一部【いちぶ】の隙も無い。大剣【たいけん】を振るえば容赦 なく相手をなぎ倒し、殴り合いでも一撃で再起不能に沈める程の豪腕【ごうわん】。エリア内 でも恐れられ、あっという間に幹部へとのし上がった。少しでも逆らおうとすれば待っている のはおそらく、死、だけだろう 」 108_ザナフ「そろそろ名前くらい教えてくれねぇかなぁ」 109_ルカ「……やぁだ!汚【よご】れた手で髪触んないでよっ!!あたしマッチョ嫌いだって言 ったのに何で来んのよ―――!!アンタお兄ちゃんの何倍分デカいのよっ!?図体デカいと態 度もデカいって誰かが言ってたけど、アンタまさにソレ!ピッタリ過ぎ!!」 110_エリア男・2「うあっ」 111_エリア男・3「い、言いやがった……怖っ」 112_ザナフ「ハハハ、つれないねぇ。ま、そこが良いんだよなぁ」 113_ルカM「 何こいつ何こいつ何こいつ―――ッ!!気っ持ち悪…!こんなムキムキの男に頬 染められても嬉しくもなんともないし!あたしの好みと全っ然違うんだからぁ!! 」 114_ウィリス「なぁんか随分楽しそうだねぇ」 115_ザナフ「―――!ウィ、ウィリス様!!……い、いつ、お越しで」 116_ウィリス「や、ザナちゃん元気だった〜?」 しばしの間。 117_エリア男・1M「 ザナちゃん……ッ!!? 」 118_エリア男・2M「 ザ、ザザザ、ザナちゃん……!! 」 119_エリア男・3M「 ザ……ザナ……っ……ちゃん……? 」 120_ザナフ「は、はい、おかげさまで……」 121_ウィリス「そう?エリア22の話を聞きに来たんだけどね、それは後にしよっか。今はこの 子の方が面白そう」 122_ザナフ「この子……ああ」 123_ウィリス「や、こんにちは。僕はウィリス・ベルディグリ。ウィリスって呼んで良いよ。あ、 こっちはアトラス君ね」 124_ルカ「カマくさい」 しばしの間。ルカが、ピシ、と亀裂の入った壁を作る。 125_ウィリス「…………ん?」 126_ルカ「ってか、胡散【うさん】臭い。ナニその作り笑顔、最ッ悪すっごいヤな感じ。ついで にエラそう。大体なんで男のクセにストール羽織【はお】ってんの?寒いの?じゃあ、そんな 腕出してないで長袖着ればいーじゃない。バッカみたい、そんな事もわかんないワケ?頭弱い の?存在イタすぎ」 しばしの間。 127_ルカ「……何よ」 128_ウィリス「……!あ、……あぁ、そうか。……ッ、アハハッ!!」 129_ルカ「……は?な、何笑ってんのよっ」 130_ウィリス「……いや〜、前にも同じ事を言われたのを思い出したよ。ほら、アトラス君。君 のトコのフレアちゃん。彼女に言われたヤツだよ?あの子もきっついよねー、アハハ」 答えないアトラス。 131_ウィリス「……おや?うーん、アトラス君はね、もうちょっと愛想を勉強した方が良いよね、 うん。ザナちゃん、こういう子が好みだったんだね〜。ところでエリア22はどう?すぐでき そう?」 132_ルカM「 ……ぜ、絶対おかしい、コイツら……!ここまで言われたら怒るのが普通じゃな いの……っ? 」 133_ザナフ「はい、それは問題ないですね。やろうと思えば明日にでもできますがね。全く、俺 達にはむかって来たのはこのお嬢ちゃんぐらいですよ」 134_ウィリス「そっか〜。スゴいねぇ、君。……ん?」 ザザ……ッ、と後方の離れた茂みから葉のすれる音。 135_ウィリス「……う〜ん、ふむ……ま、いっか。ゴメン、ザナちゃん、もう帰るよ。来たばっ かりだけど、ちょぉっと面倒な事になりそうだからね」 136_ザナフ「は?面倒ですか?」 137_ウィリス「そー。や、見送りはいいんだ。じゃあまた来るよ。……それまでここが、無事だ ったらね」 パチン、とウィリスが軽く指を鳴らすと、その一瞬で2人の姿がかき消えた。 138_エリア男・3「き……消えた……」 139_ルカM「 しゅ、瞬間移動……!?は……初めて見た……。学校の授業で聞いた事はあるけ ど、あれって半端じゃない長い詠唱と、重ねに重ねた陣【じん】が必要だって言ってたのに… …それを指一本で 」 140_ルカ「な、何ソレ……反則でしょ……」 141_エリア男・1「……?無事だったら……?」 第6話・終了 < 戻 > |