double contract 第3話 +++ CAST セイ/sei/小沢凌様 シェル/shel/片岡みちか様 メイス/meis/恵ゆう様 ユリィ/yuly/深月悠衣様 館長(ラザリック)/raz/johnny様 スイ/sui/星名優子様 +++ +補足 【 】内はただの読み方です。 ( )は演じる上での指定になります。 途中で出てくる、セイM、のMはモノローグを表しています(お手数ですが、sei_m_台詞番 号、と保存お願い致します) ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ○ スカルローク国立図書第二分館・2階 とっぷりと暮れ、窓の外、遠くに烏の鳴き声が聞こえる。 001_シェル「―――今日は結構日が暮れるの早いわね、もうこんなに真っ暗」 002_ユリィ「いつもなら閉館の時はもちょっと明るいですよねぇ」 003_メイス「嫌な感じね」 004_シェル「……ちょっとやめてよ、メイス。あら?館長は?」 005_セイ「あっ、館長なら書類整理が残ってるからって、事務室に」 006_シェル「そう。じゃあ……どうしようかしら、いいわよね?先に始めても……というより、 ん〜、実際説明するとなると難しいわね……」 007_ユリィ「絵本調にぃ、“ 昔々、1人の少年が自分の街を崩壊させちゃいましたぁ ”って 言うとわかりやすいですよねぇ。いっその事、絵本作っちゃいます〜?」 008_シェル「させちゃいましたぁ、って……ユリィ、明るい話なんだか暗い話なんだかわからな くなるような事を……。それにいちいち絵本作るヒマないわよ。大体そこからが話の初めじゃ ないでしょう?前【ぜん】リーダーってのがいたじゃない」 009_ユリィ「……あ、そっかぁ〜。全く、ややこしいですねぇ〜……。確か今の人って27歳な んですよねぇ。うわ、私と6歳しか違わないじゃないですかぁ」 010_シェル「うっそ、そんなもん!?そんなのがエリア取り仕切ってるなんて信じられない」 011_メイス「シェル、ユリィ」 012_シェル 012_ユリィ「 「 え? 」 」(声がかぶる) 013_メイス「2人で勝手に盛り上がって、セイ君が困るじゃない。その分帰りも遅くなるんだか ら、さっさとしなさい」 014_セイ「あ、ぼ、僕は別に」 015_シェル「あ、ゴ、ゴメン。説明ね。えぇと、最初に断っておく事が2つ。1つは私の説明っ て多分わかりにくいけど頑張って聞いてね……はは(渇いた笑い)。もう1つは……セイ君、 魔力は知ってるよね?」 016_セイ「あ、はい。“ 誰でも最低限は持ってる、自然を操る力 ”って聞いた事があります」 017_シェル「そう。それが強い人だと魔法を使いこなせるけど、弱い人はてんでダメ。私みたい にフツーの暮らしのみよ。これからの話に出てくる少年はあまりに強大な魔力を持ってるの。 覚えてて。……(細く息をついてから、ゴホン、と一つ咳払いを)」 018_メイス「私とユリィは補足【ほそく】説明役にでもまわるわ」 019_シェル「――――――昔、16年前の事よ。どこの誰かも分からない1人の若い男が、この 国スカルロークに入ってきたの。名前は、ウィリス・ベルディグリ。……発音しにくいわね。 そいつは毎日のように街々を襲って、金品【きんぴん】や食料を巻き上げていたわけ。仲間達 と一緒に強い魔力や剣を笠【かさ】に着てね。当然のように邪魔をした人達は、処刑と称して 、有無を言わさず殺される……家族も一緒に。特に被害が大きかったのは、スカルロークの中 心部に位置する、ルシア。奴らの寝床【ねどこ】に近かったのが災【わざわ】いしたわ」 020_ユリィ「そんなある日の事でしたぁ」 021_シェル「ユリィ……変な相槌うたないで……。でもホントにそんなある日の事。いつものよ うに奴らがルシアを襲った時。1人の少年が……」 022_メイス「当時11歳と聞く」 023_シェル「そう、11歳の男の子。名前は、“ アトラス・ディアード ”。何がきっかけだ ったかはわからないけれど、突然……彼の魔力が暴走【ぼうそう】したのよ。目を焼くような 光と共に……」 024_メイス「まるで、元々そこにあったように自然に転がる首。様々な臓器が飛び出す、投げ出 された肢体。神経と切り離された、薄汚れた瞳。一瞬のうちの死者15名。重症32名の被害 は、街の人間達の脳内に新たなる恐怖をすり込んだ」 025_ユリィ「……あぅ……メイス先輩の言い方リアルで気持ち悪いですぅ……うぅ」 026_メイス「これでも表現を抑【おさ】えたつもりだけど……?」 027_ユリィ「ぅえぇぇ……」 028_セイ「11歳の、子供が……?」 029_セイM「 さっきまで……動いていた人間達が、ただの“モノ”へと変化する。肉塊【にく かい】と呼ばれる、“ モノ ”へと。……動かなくなる……ドロドロした赤い血を流しなが ら…………暗闇に……鈍く、光る剣……振り上げられた、赤い、剣……“ 死んでしまったの よ…… ”って……横たわったまま、動かない……ジー…… 」 030_セイ「……痛……っ……」 031_セイM「 ……これは、何の記憶……。一体いつの、誰の……。記憶が、ぼやける、目の前 で……血を流し…………死んでるのは……誰……?痛い……考えれば考えるほど、頭が締めつ けられる様に、痛い。……何……?首のあたりが、熱い…… 」 032_シェル「…………イ君、セイ君……?」 033_セイ「―――ッ」 034_ユリィ「どうしましたぁ?」 035_メイス「具合でも悪いの、少年」 036_シェル「大丈夫?今の話で気持ち悪くなっちゃった……?」 037_セイ「(少しあがった息を整えてから)……だ、大丈夫、です。続き、教えて下さい」 038_シェル「そう……?嫌になったら言ってね。……それで、その出来事を見ていたウィリスが、 アトラスを自分の仲間に入れたの。彼は素直について行った。最初から仲間に加わるつもりだ ったらしい、って説【せつ】が囁【ささや】かれてる。アトラスは評判も良くなくて、元々近 いうちに街を追い出される予定だったそうよ。そして、強大【きょうだい】な力を手に入れた 奴らの行動は、どんどん、酷くなっていく」 039_メイス「エリアの完成と拡大、そして、新しいリーダーよ」 040_シェル「メイスの言う通り。ウィリスはその街、ルシアを完全に乗っ取り“エリア0【ぜろ】 ”という新しい名前をつけた。住んでいた人達には殺されるか別の街に逃げるか、という最悪 な2つの選択肢しか与えられなかった。……ウィリスは、みずからリーダーを辞退して、新リ ーダーをアトラスに任せたの。そして自分はその補佐に。エリアは今や完全なる無法地帯よ。 何をしても許される。警察も手出しできないわ。」 041_ユリィ「それからエリアが増えていったんですよぉ〜。今年でもうエリア21【にじゅうい ち】まで。16年で、0を含めたら全部で22個。」 042_シェル「そう。色々な街のはずれには大抵ある。酷いトコなんて2つあるわね。この街で一 番近くて……山1つ向こうのルクスとか。ウィリスは各エリアには必ず1人、強い魔力の持ち 主を配置してる。そのせいで街の人達は従うしかないの。毎日、怯えながら暮らすのよ。今日 は襲いに来るのか、来ないのかって……ちなみに、ウィリスとアトラスは、今でもエリア0で 活動してる」 その時、ギィ、と事務室のドアが開く。 043_館長「そして、今度はこの街がエリア22【にじゅうに】候補となった訳だ」 044_シェル「館長!」 045_館長「そろそろ裏玄関の鍵も閉めるぞ。セイはただでさえ疲れてるんだ、さっさと帰れ」 046_ユリィ「あ、もうそんな時間ですかぁ〜」 047_シェル「エリアの説明もちょうど終わったし、帰ろっか。明日はコントラクターの話でもし よう」 048_セイ「コントラクター……?」 049_メイス「エリアと戦う……簡略【かんりゃく】に言えば正義の味方よ、少年。気をつけて帰 りなさい」 050_セイ「あっ、はい、じゃあ、お先に失礼します……っ」 051_メイス「お疲れ」 052_シェル「お疲れ様。セイ君、今日は早く寝て、しっかり疲れ取らなくちゃダメよ」 053_ユリィ「寝る前にホットミルクを飲むといいらしいですよぉ」 054_館長「また明日」 055_セイ「はい……!」 セイが階段を下りていく。 それが遠ざかるのを最後まで聞いて、ユリィが口を開く。 056_ユリィ「けど、何でエリアの事知らなかったんでしょぉ?セイ君、今確か21歳で すよねぇ。私と同じですからぁ……えっとぉ、16年前は5歳。知っててもおかしくないと思 うけどなぁ〜」 057_シェル「21歳……いつ聞いても慣れないわ……どう見ても16,7歳なのに……」 058_メイス「なかなかの童顔よね。それにしても……これまで、おじい様やおばあ様にエリアの 話をされたりしなかったのかしら」 059_ユリィ「セイ君、他に親戚とかいないんでしょうかねぇ〜?もう死んじゃったって言ってま したけど、そのおじいちゃんとおばあちゃんだけですかぁ?」 060_館長「セイの祖父母は肉親【にくしん】ではない」 061_ユリィ「……へ?」 062_シェル「えっ、館長何か知ってるんですか?でも、それだったらセイ君達は養子とか……?」 063_館長「それともまた違うな。14年前、当時7歳のセイと2歳の妹はバールの森で拾われた」 064_シェル 064_ユリィ「 「 えぇっ!? 」 」(声がかぶる) 065_メイス「館長、何故そんな事を」 066_館長「ウチの祖父とセイの祖父母は知り合いだったからな。セイがここで働き出したのも祖 父の紹介だ」 067_ユリィ「はぁ……、そんな繋がりあったんですねぇ〜……それにしても深刻な話題ぃ。でも それとエリアを知らない事って、関係あるんですかぁ?」 068_館長「……ある。その時セイは、最低限生活できる以外の記憶を失っていたらしい。妹も小 さすぎて何を聞いても無駄。一体どこの子供だかわからないまま……この街で育った。だから 16年前の事などわからなくて当然といえば当然だな。唯一覚えていたのは、自分と妹の名前。 セイ、ルカ、ルミナリエ」 069_シェル「で、セイ・橘・ルミナリエ。あら、橘っていうのは?ちょっと発音しにくいけど… …別の国の言葉?」 070_館長「橘はセイの祖父母が別につけた名前だ。祖母の方がはるか東の島国出身らしくてな」 071_シェル「なんか……色々、複雑なのね……セイ君、あんなにいい子なのに……」 072_館長「人は見た目だけでは、そうわからないものだからな」 ○ 外 セイが急ぎめに駆け足で通りを過ぎる。 073_セイ「……結構遅くなっちゃったなぁ……ルカ、もうゴハン食べてるかな……でも今日は確 か……友達と出かける、とか言ってたからもしかしたらルカの方が遅いかもしれないな」 通りを駆け続ける。 074_セイ「…………あれ……?何か……ウチの前に誰か、いるような……」 徐々に駆ける足をゆるめて近づく。 075_セイ「あ、あの……」(窺うように) 076_スイ「―――きゃあっ!!!」 077_セイ「えっ」 078_スイ「ひっ、やっ、あっ……や、やだっ、ごめんなさい……!」 079_セイ「あの……ウチに何か、御用ですか……?こんなとこ……あっ、あれ?君、スイちゃん だよね、ルカの友達の」 080_スイ「は、はい。こんばんは、ルカのお兄さん……」 081_セイ「こんばんは……って、確か今日ルカが、スイちゃんと出かけるって言ってたような気 がするんだけど……ルカは?家の中も電気ついてないみたいだし」 082_スイ「ル……ルカ、は……その…………あの、えと…………(涙ぐみながら)ご、ごめんな さい―――!!」 083_セイ「えっ!?ス、スイちゃん!?」 084_スイ「(泣きながら)ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……っ!私が、私がちゃんと 止めてたらあんな事になんか、あんな……!!」 085_セイ「(うろたえながら)ス、スイちゃん落ち着いて、落ち着いて話そう、ねっ?」 086_スイ「で、でも、ルカ、ルカがぁっ」 087_セイ「ル……ルカに何かあったの!?」 088_スイ「ひ、引きずってでも、止めれば良かったのに……!」 089_セイ「スイちゃん!一体何があったの、ルカは今どこにいるの!?」 090_スイ「(泣き止むも、まだ多少涙ぐみながら)ル、ルカ、ルカはエリアの人達に連れて、か れ、て……」 091_セイ「………………え……?」 092_スイ「ごっ、ごめんなさい……!」 093_セイM「 ……ちょっと待って……エリア?エリアの人達?……って、ついさっきシェルさ ん達が教えてくれた、あのエリア?あの、残忍【ざんにん】な、警察も止められないっていう エリア?ルカが……エリアの人間に、連れ去られた……? 」 094_スイ「ルカのお兄さん、ごめんなさい……私、見てるだけしか出来なくて…………あ、遊び に行った帰りに、ルカの家に少し寄ろうって……事になったんです。そ、そうしたら近くで、 男の人達が女の人に絡【から】んでて……私、怖くて、ルカに早く行こうって言ったら……」 095_セイ「…………言ったら……?」 096_セイM「 凄く……嫌な予感が…… 」 097_スイ「言ったら……“ 先に行ってて。アタシあいつらブン殴ってくる ”って……!!」 098_セイM「 や、やっぱり…………そう、そうだ、ルカは昔から桁【けた】外れに正義感が強 くて……相手がどんな人だとしても、悪い事してると食って掛かっていってた……そう、どん な奴らでも。でも…………でも、今回は、レベルが違いすぎるよ……!! 」 099_スイ「あ、あの、それで……しばらく言い合ってたと思ったら、連れていかれて……っ」 100_セイM「 シェルさん達の話では、エリアの人達って何でもする訳で……窃盗とか、殺人と か……さっ、殺人とか……とか……!!ど、どうしよう、どうすれば、どうすればいい、僕は どうすれば……! 」 101_スイ「本当に、本当にごめんなさい……!!」 102_セイ「――――――どこに」 103_スイ「……え?」 104_セイ「それでルカは、どこに連れて行かれたか……スイちゃん、わかる?」 105_スイ「えっ、あ、あの、た、多分なんですけど、ルカを連れて行った人達は山一つ向こうの、 隣街【となりまち】の、ルクスのエリアから来てたみたいで……でも、ルクスにはエリアが2 つあるんです、そのどちらかはわからなくて……ど、どうしましょう、どうにかルカを無事に 連れて帰る事なんか私達には………………あっ、あれっ、ルカのお兄さんっ?えっ、あれっ、 いない……!ど、どこに、さっきまでいたのに」 ガチャッ、と玄関の戸が開き、バタンッ、と閉まる。 106_スイ「あっ、ルカのお兄さん、いつの間に家の中に……!?し、しかもその背負ってる荷物 って、まさか……」 107_セイ「食料とお金と……簡単な旅支度」 108_スイ「…………え、えと」 109_セイ「行ってきます」 セイの足音がスイを遠ざかっていく。 110_スイ「………………はっ、ちょっ、ちょっと待って下さい〜〜〜っ!!!」 ドスッと体当たりの如くしがみつくスイ。 111_セイ「わぁっ!ス、スイちゃん、あ、危ないから!」 112_スイ「危ないのはどっちですか!どこに行くんですかっ!」 113_セイ「スイちゃん離して。ルカを、助けに行くんだ」 114_スイ「きゃ―――!!だっ、駄目です危険です無謀です――――――っ!!」 115_セイ「僕がっ、僕が行かなきゃ」 116_スイ「おっ、落ち着いて下さい、落ち着いて話し合いましょうっ!?」 117_セイ「落ち着くなんて無理だ、ルカは僕のたった1人の妹なんだから。放って置くわけには いかない……!」 118_スイ「で、でも、お兄さん1人乗り込んでも、お兄さんも一緒にやられちゃうだけです、エ リア1つだけでも何人いると思ってるんですか……っ!!」 119_セイ「それでも、僕は……っ!」 120_スイ「普通の人がエリアの人達に敵うわけが無いんですっ、だからコントラクターなんて出 来る位なんですから……っ…………あっ!!!」 121_セイ「えっ?」 122_スイ「い、いました!いました、エリアの人達に敵う人が!!今までこのバールにはエリア の被害が無かったから忘れてましたけど、コントラクターがいました!!」 123_セイ「コ、コントラクターって、確か……」 〜回想〜 049_メイス(を使用) 「 エリアと戦う・・・簡略に言えば正義の味方よ、少年 」 〜回想終了〜 124_セイM「 正義の……味方……。その人に助けてもらえば、ルカは……! 」 125_スイ「東のクロム・西のウォン・南のサウラ・北のアシュレー……有名どころは各リーダー の4人ですけど、ルクスには東の“ クロム・G・ブルーベック ”さんがいますから、頼ん でみたらどうでしょうか……っ」 126_セイ「コントラクター……うん、わかった……行ってみる、頼んでみるよ。そして、絶対に ルカと一緒に戻るから」 127_スイ「はい……っ」 第3話・終了 < 戻 > |