double contract 第2話 +++ CAST シェル/shel/片岡みちか様 メイス/meis/恵ゆう様 ユリィ/yuly/深月悠衣様 館長(ラザリック)/raz/johnny様 セイ/sei/小沢凌様 +++ +補足 【 】内はただの読み方です。 ( )は演じる上での指定になります。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ○ スカルローク国立図書第二分館・2階 いたって何事も無い、さわやかな朝。 パタパタパタ……、と館内に響く走る足音が徐々に近づいてくる。 足音が止まるやいなや、バタンッ、と勢い良く事務室のドアが開けられた。 001_シェル「―――ちょ、ちょっと皆っ、大変よっ!」 002_メイス「どうしたのよ、館内では大きな声を出さないのがルールでしょ」 003_ユリィ「ココ、どこだと思ってるんですかぁ」 004_館長「髪、すごいぞ」 005_シェル「〜〜〜ッ!わかってるわよ、図書館でしょ。それに普通ココでは“ 何かあったの ? ”位は聞くのが人ってモンじゃないのっ?」 006_メイス「……だって、シェルの“大変よっ”は今に始まったことではないじゃない」 007_ユリィ「驚きませんよねぇ」 008_館長「驚かないな」 009_シェル「むっ。何よそれ、聞き捨てならないわね」 010_メイス「さあ、各自持ち場に戻りましょうか」 011_シェル「メイス!えっ、ちょっと、本当に皆戻るの!?もう……!……ん……あれ……?」 012_ユリィ「どうしたんですかぁ、先輩?」 013_メイス「……どーせ、また“癒し”を求めてるんでしょ。私達が冷たいから」 014_館長「アレか」 015_メイス「アレです」 016_ユリィ「あ〜、アレなら昨日ずっと残って仕事してたみたいでぇ。この階にはいると思いま すよぉ」 017_シェル「アレアレってあんた達、物じゃないんだから……( ここで溜息一つ )……行っ てきます」 ○ 同・2階ホール コツコツコツ、と2人分の足音。 遅れてもう2人分の足音。 018_シェル「ねぇ、メイス。アンタもセイ君朝から見てないの?」 019_メイス「今日はまだ事務室しか入ってないもの」 020_ユリィ「でも私だったら残ってまで仕事できませんよぉ。セイ君頑張りやさんですよねぇ」 021_館長「館長としては仕事できる方が嬉しいな。今度ユリィにもさせようかと思ってたが?」 022_ユリィ「ぅえぇ〜〜。ホントですかぁ……?ヤダぁ……夜更かしは身体に良くないですよぉ」 023_シェル「……ってか何で館長とユリィまでついてくんのよっ」 024_館長「 特に意味は無い 」 025_ユリィ「ですぅ」 026_シェル「あっそ……ったく暇人なんだから。野次馬。……ねー!セイ君!どこーっ?……っ、 きゃあ!」 その瞬間、何かにつまづきシェルが転ぶ。 027_メイス「あら……」 028_ユリィ「先輩、面白い転び方ぁ」 029_館長「足元不注意だ」 030_シェル「……あ、あんたら……“ 大丈夫? ”くらい聞きなさいよ!っこの人でなしー! 全くもう……ん?でも、転んだのに痛くない……?と言うより、何か下にクッションみたい なのが……………………っキャ――――――ッ!」 031_メイス「おや」 032_ユリィ「まあ」 033_館長「とりあえず、クッションじゃない事は目に明らかだな」 034_シェル「セっ、セイ君――――――!!えっ、ちょっと何コレ!き、気絶!?私のせい!? えっ、でも、血!なんか額【ひたい】から血が出てる!私のせい!?」(泣きそうに) 035_メイス「とりあえず、落ち着きなさい」 036_ユリィ「とーりあーえず〜、本も手一杯散らばってますねぇ」 037_シェル「……な、なな、ななななななな」 038_メイス「正しい言葉を話しなさい」 039_ユリィ「あっ、いやぁ、床にも血がぁ」 040_館長「死んだか。自殺か?他殺か?」 041_シェル「……そんな悠長【ゆうちょう】な事言ってる場合じゃないでしょうが〜〜〜っ!!」 042_メイス「そう、ねえ」(何事もなさそうに、言葉だけで) 043_ユリィ「ゆうちょう?」 044_館長「ユリィ。悠長とは……落ち着いているさま、のんびりと気が長いさま、の事だ」 045_シェル「セ……セイ君っ!セイ君!!何で死んじゃったのよ〜〜!!!お願い、生き返って 〜っ!」 046_セイ「……うぅ……」 047_シェル「キャ―――ッ!!」(驚いて) 048_セイ「…………ん……?」 049_シェル「セっ、セイ君っ!?し、死んでないのッ?」 050_セイ「……ぅえ……?……ん……んん……っ」 051_シェル「セ、セイ君、だ、大丈夫……?額【ひたい】から、血が、で、出てるけど」 052_セイ「……血……?…………ぁあッ、皆さん!お、おはようございますッ!!」 053_メイス「おはよう、少年。後で床拭いておいてね」 054_ユリィ「おはようございますぅ」 055_館長「あぁ。本も棚に戻しておく事」 056_シェル「………………アンタ達、ただ寝てただけってわかってたの……」 057_メイス「死んでるか生きてるかなんて良く見れば分かる事でしょう」 058_ユリィ「ですよねぇ」 059_館長「だな」 060_シェル「……っ……!ああっ、もう!何でわかってたのに言わないのよ、バカ〜〜〜〜〜〜 ッ!!!」 ○ 同・事務室 室内時計が地味に響く。 事務室へと移動後、4人に囲まれて縮こまるセイ。 061_館長「…………それにしても、だ」 062_セイ「あっ、えと……す、すみませんでした館長……」 063_ユリィ「何だか館長がセイ君いじめてる様に見えるのって私だけですかぁ?」(ヒソヒソと 小声で) 064_メイス「大丈夫よ、ユリィにしては珍しく的【まと】を射ているわ」(同じく小声で) 065_シェル「ちょっと、アンタ達!」(同じく小声で) 066_館長「ああ、いや、本には何の問題も起きてはいない。気にするな」 067_ユリィ「本バカ……」 068_館長「?今何か言ったか、ユリィ?」 069_ユリィ「と……っ、とんでもありませんよぉ!えっと、あのぉ、でもぉ、仕事中に落ちてき た本にぶつかって気絶のまま朝まで眠ってたなんて、スゴイですよねぇ」 070_メイス「しかもそれで額切って出た血にも気付いてないとは大物ね」 071_セイ「ほ……っ、本当にすみませんでした……っ!!」 072_シェル「ちょっと、メイス、ユリィ!何追い討ちかけてんのよっ!!しょうがないじゃない、 セイ君は疲れてたのよねっ!」 073_メイス「シェル」 074_シェル「な、何よ」 075_メイス「……そう。問題はそこよ。少年はここの所働きすぎ」 076_ユリィ「それがこの事件の発端【ほったん】なんですねぇ」 077_館長「成る程。近頃は休み無しで、しかもさりげなく一昨日【おととい】も泊り込みだった からな。寝てなかっただろ」 078_シェル「なっ……何ですかソレ!?こんないたいけな少年が2連続泊り込みで仕事ですって !!?何考えてんのよ、こぉの、か・ん・ちょぉ・う―――ッ!!」 079_館長「いっ、やっ、そんなっ、事、言われ、てもなっ、彼からっ、申し、出た、訳っ、でっ! ……ぅえっ」 胸倉を掴み、これでもかと揺さぶられのびた館長をシェルは、ドサリ、と落とす。 080_ユリィ「先輩〜、胸倉【むなぐら】つかむだなんて、女の子のする事じゃないですよぉ」 081_メイス「その上で落とすだなんて……やるわね」 082_シェル「ど、どーゆー事なの、説明して頂戴【ちょうだい】セイ君っ!?休みナシで完徹【 かんてつ】だなんて身体がもたないわよっ!」 083_セイ「い、いえ、あの……妹が来月進学するんで色々とお金が……」 084_シェル「進学……!」 085_メイス「入り用【いりよう】の金ね」 086_ユリィ「おめでとうございますぅ」 087_メイス「ユリィ、つっこむ所はそこではないわ」 088_ユリィ「えぇ〜、だって良い事じゃないですかぁ?」 089_メイス「……あいかわらず今日も天然絶好調ね」 090_ユリィ「えへへぇ〜、ありがとうございますぅ〜」 091_メイス「褒めてないわ」 092_ユリィ「あれぇ?」 093_シェル「そっ、そういえばセイ君って妹さんと二人暮しだったかしら?ご両親はお金の工面 とかしてくれないの……?」 094_セイ「両親はいません」 少しの間が空く。 095_シェル「ごっ……ごめん、セイ君……」 096_メイス「地雷【じらい】」 097_ユリィ「ちゅどーん」 098_セイ「あっ、あの、気にしないで下さいっ。そのかわりに、おじいさんとおばあさんに育て てもらってたんです」 099_メイス「過去形?」 100_セイ「はい。3年前に2人共、亡くなったので」 101_メイス「そう……。じゃあ、今は少年の稼ぎで食べていってるという訳ね。大変じゃない?」 102_セイ「いえ。若い時の苦労は買ってでもしておいた方がいいって、おばあさんも言ってまし たし、大好きな本に囲まれてさらにお給料も貰えるんですからすごく嬉しいんですよ」 103_シェル「っ、セイ君――――――っ!!」 ガバアッ、とセイに抱きつくシェル。 104_セイ「ぅわぁっ!……シェ、シェルさんっ?」 105_シェル「セイ君いじらしすぎるわっ!できるモノなら私が養ってあげたい〜っ!」 106_メイス「同感ね」 107_ユリィ「ぅわ〜い、私も私も〜♪」 108_館長「同じく」 109_シェル 109_メイス 109_ユリィ「 「 「 えっ 」 」 」(声がかぶる) 再び、少しの間が空く。 110_シェル「……館長……そんな趣味が……セイ君がいくら女の子みたいに可愛いからって……」 111_館長「冗談だ」 112_シェル「セ、セイ君、あのおじさん危ないから近寄っちゃダメよ」 113_館長「まだ27なんだが」 114_シェル「冗談です。でもホント、セイ君といると和むわ〜……嫌な事も忘れそう」 115_ユリィ「先輩っ、嫌な事あったんですかぁ?」(嬉しそうに楽しそうに) 116_シェル「……なんか……心持【こころも】ち、嬉しそうじゃない……?まあ、それよりも。 あるどころか、ユリィも嫌な事よ。皆も。コレ言うために今朝走ってきたんじゃない。それな のに誰も真面目に聞いてくれないし」 117_メイス「いつまでも少年に抱きついてないで、さっさと言う」 118_シェル「あっ、メイスひどいっ。思えばアンタが最初に私の言葉さえぎったんじゃない」 119_メイス「さ、皆仕事に戻りましょうか。そろそろ開館」 120_シェル「ゴ、ゴメンっ!お願い、聞いてっ。この街バールにエリア22【にじゅうに】がで きるのよっ!」 121_メイス「!」 122_ユリィ「…………えぇぇ!!ヤダそんなの絶対ヤダあ!!」 123_館長「それは本当か」 124_シェル「間違いないみたいよ。最近ガラの悪いヤツらが街に入ってきてたでしょ?アレ、規 模拡大【きぼかくだい】の為の視察【しさつ】だったらしいわ」 125_メイス「あぁ……そういえばそんなのいたわね……。あの頭悪そうな集団」 126_ユリィ「ヤですよっ!私そのせいで2年前にコッチに引っ越してきたんですよぉ!!それな のにココにもできるだなんて、どうすればいいんですかぁっ!?ひ〜どぉ〜いぃ〜〜〜っっ! !」 127_シェル「……ちょっ……痛っ。髪振り回さないでよっ。私だって皆だって困ってんの!エリ アなんて出来た日には、マトモな生活できないんだからっ。せっかくこの街は平和で良かった って思ってたのに……!」 思わずシェルの腕に、ギシギシ、と力が入る。 128_セイ「―――!……シェッ、シェルさんっ、く……苦し……」 129_シェル「……きゃああぁぁっ!ごっ、ごごごめ……っ!!」 130_ユリィ「抱きついたまま力入れちゃダメですよぉ」 131_メイス「……もう少しで未来ある若者をあの世へと導く所だったわね」 132_シェル「なっ!何なのよッ、ワザとじゃないのよっ、メイス!」 133_メイス「…………どうだか」(謎めいた笑みを口元に浮かべながら) 134_シェル「ななな、何ですってぇっ!!?」 135_ユリィ「くすん。……どうしよぉ〜……また引っ越さなくちゃいけなくなったりしてぇ……」 136_館長「おい、ユリィ泣くな、仕事だ。開館準備するぞ」 137_ユリィ「はぁい……」 138_セイ「…………あ、あの……エリアって……何ですか……?」 139_シェル「えっ!」 140_メイス「あら……」 141_ユリィ「……マジで聞いてますぅ……?」 142_館長「そうか、知らないのか」 143_セイ「……え?」 144_シェル「……そっか、セイ君は知らなかったのねー。結構有名な話だと思ったのにな」 145_ユリィ「あれって何年前の話でしたっけぇ?」 146_メイス「16年前よ。でも開館まで時間が迫ってるから、話は落ち着いてから……そうね、 閉館してからにしましょうか」 147_シェル「そうね。大事な事だし、セイ君も知っておかなくちゃ」 第2話・終了 < 戻 > |