double contract 第1話 +++ CAST 王/ou/仁紫竜也様 ジーク/jeek/哲也様 セイ(7歳)/sei/小沢凌様 ルカ(3歳)/ruca/廣川有希様 エリア6の男a(以下、“6a”に省略)/6a/高崎聖二様 同上・男b(以下、“6b”に省略)/6b/鮎津田軸様 +++ +補足 【 】内はただの読み方です。 途中で出てくる、セイM、のMはモノローグを表しています(お手数ですが、sei_m_台詞番 号、と保存お願い致します) ( )は演じる上での指定になります。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ○ スカルローク城・セイの部屋 やや重厚な時計の針が刻む音。 部屋の窓から街を見下ろす王が、小さく溜息をもらす。 王_01「……ふぅ……」 時計の音とダブらすように靴底を鳴らし、王がベッドに眠るセイに近づく。 セイ_01「 (静かめに寝息) 」 王_02「……よく眠っている……」 王、ぎしり、とベッドに腰掛ける。 王_03「セイ……そういえば、もうすぐ8の歳を数えるようになるのか……月日というのは実に 早いものだ、こんなにも、こんな……まだ……まだこんなに子供であるというに…………何 故だ、何故なんだ……あんな物を、あんな物を受け継いでしまったせいで背負わなければな らぬ運命など…!」 セイ_02「 (再度、寝息) 」 王_04「……変われるものならば私が……ッ!!」(悲痛に) バタバタバタ、とどんどん近づいてくる走る足音。 王_05「……?……何だ一体、誰だこんな時刻に」 バタンッ!、と勢いよく、城につかえる老僕【ろうぼく】のジークが部屋の扉を開けた。 切羽詰ったような青白い顔、肩で大きく呼吸をしている。 ジーク_01「(ぜえはあ、と息をついてから)お……っ、王、こちらにおられましたかッ!」 王_06「お前か、ジーク。どうした、何かあったのか」 ジーク_02「や、夜盗です!今、どうにか門兵が取り押さえておりますが、上がりこむのは時間 の問題かと……!」 王_07「まさか、そいつらは」 ジーク_03「はい……エリア6【ろく】の統率者が首謀、かと」 王_08「……とうとう来たか、狙いはおそらく…………イグザレトムーヴ」 ジーク_04「……や……やはり、あの魔剣を狙いに……?し、しかし、そうなればセイ様が!夜 盗があの事を知らずともセイ様に危険があっては……!!すでに兵の中にも死人は出ており ます、誰かれかまわず殺すような奴らゆえ!!」 王_09「わかっている。……ジーク、セイを起こしてルカと共に裏から逃げろ。ほとぼりが冷め た頃に戻ってくるんだ、エリア6如きなら今夜のうちにどうにかなる……」 ジーク_05「お、王はどうなさるのですか」 王_10「私はセレンの所へ。あれも不安がっているだろう…………2人を頼んだぞ、ジーク」 ジーク_06「か、かしこまりました、このジーク・トルーダー、何にかえてもお2人を……!」 王_11「お前も気をつけろ。明日【あす】、また会おう」 そう言って、コツコツ、と靴音を鳴らし部屋を出て行く王。 遠ざかっていく音。 ジーク_07「いいえ、王……この老輩【ろうはい】に何があろうとも…………セイ様、セイ様っ、 起きて下さいませ!」 ○ 同・裏口 ひっそりと静かな裏口の扉の前に、ジーク・セイ・ルカ(子供) コツコツ、と反響する靴音。 セイ_03「……ねぇ、ジーク」 ジーク_08「いかがなされました、セイ様」 ルカ_01「 (ホコリくささに、コホコホ、と軽くむせる) 」 ギギィ……、と錆びてるせいか重めの音をたてて裏口の扉を開けるジーク。 ジーク_09「セイ様、ルカ様、こちらへ……」 ○ 同・戸外 ギィ……ガチャン、と扉が閉まる。 城の外、草を踏みしめ歩く3人。 セイ_04「……ねぇジーク、何かあったの……?どうしてこんなトコから外に出るの?それに、 いつも外には出ちゃ、駄目だって…………ねぇ、お父様とお母様は?」 ジーク_10「いいえ……大丈夫です、セイ様がご心配なさる事ではありません」 セイ_05「じゃあ…………。ううん……何でもない」 セイM_06「 いつも……いつも大事な事は誰も教えてくれない。大人ばっかり。でも、今日は、 いつもと何か違う……?だって……僕は、今まで一度も城から外に出た事なんて、無かった のに。お父様も、お母様も、ジークも、駄目だって。まるで、そう、まるで僕がいる事を隠 してるみたいに…………違う……本当に隠されているのかもしれない……でも、何で……」 ○ 同・裏森 ザワザワ、と森の葉が風に擦れてかすかな音をたてる。 不気味に響く、鳥の鳴き声。 ジーク_11「今日は申し訳ございませんが……どこかの宿に、泊まる事になります。宜しいでし ょうか?」 セイ_07「……うん」 ジーク_12「……さ、この森を抜けたらすぐに良い宿を見つけましょう」 ルカ_01「眠いぃ……ヤダぁ……」 セイ_08「ルカ」 ルカ_02「ルカ、帰る。ここ怖いぃ……ヤダぁ、お父様ぁ、お母様ぁ」 セイ_09「ルカ……大丈夫だよ、森の中は真っ暗だけどホラ、ジークのカンテラがあるからここ は明るいよ。それにもう、結構歩いたから、城に戻る方が時間がかかるんだよ」 ルカ_03「ふぇ……(小さく泣き出す)」 セイ_10「ルカ……」 ザザ、と誰かが草を掻き分け進んでくる。 ジーク_13「―――ッ!」 セイ_11「……ジーク……?」 音が近づいてくる。 ジーク_14「……セイ様、ルカ様、どうかお静かに……」 セイ_12「ジ……」 ルカ_04「(泣き止んでから)……?……何か来るよ……?」 さらに近づく。 ジーク_15「お2人とも、どこか茂みにお隠れください……!早く!」 セイ_13「え……」 ジーク_16「早く!!」 ルカ_05「ジークぅ……?」 セイ_14「ル……ルカ、おいで、こっちだよ」 セイM_15「 嫌な、感じ……すごく嫌な感じがする……。よくわからないけど、早く、早く隠 れなきゃ、隠れなくちゃいけない気がする……! 」 セイ_16「ルカ……?ほら、早く・・・!ルカ!早くってば!!!」 セイが叫び終わると同時に、シュッ、と横薙ぐ音、そして、ドサッ、と何かが落ちた。 ルカ_06「……うぇ……?」 セイ_17「……ジ……?―――っ!見ちゃ駄目だ、ルカ!!」 ルカ_07「お兄……ジークのおひげが、真っ赤だよ、お兄ちゃん、なんで……?」 セイ_18「……ッ!」 ルカ_08「いっつも真っ白だよ、でも今は赤いの、なんで?」 セイ_19「……ッルカ!!」 ガバ、とセイがルカの目を両手で覆う。 ルカ_09「お兄……っ?見えないぃ、真っ暗怖い!手、やだぁ、離してっ」 セイ_20「お願いだからっ、駄目なんだ、見ちゃ駄目なんだよルカ!!」 ザッザッ、と近づいてくる2人分の足音。 6a_01「あーあーあー、鉄錆くせぇな」 6b_01「自分がやっといてその言い草かよ。いい加減、上手くやれるようになっとけっての」 6a_02「あぁん?」 6b_02「―――!おい、ジジィの他にガキもいるぞ」 6a_03「マジかよ。……ってかオイ、こんなに小せぇと高く売れねぇんじゃねぇか?面倒だし、 殺しちまえば?」 6b_03「いや、だけどよ。このジジィ、城の人間だろ。って事はこいつらも関係あんだろ。い い服着てるし」 エリア6の男aがジークの荷物をあさる。 6a_04「……おい、こいつアレ持ってねぇぞ!」 6b_04「マジかよ!裏から逃げたりするヤツが持ってるってのが相場【そうば】だろうがよ!」 6a_05「知らねぇよ。大体、単独行動してんだからバレたら大目玉だぜ。早く合流しねぇと」 6b_05「まさかこいつらは持ってないよな。剣なんてガキの荷物には入るわけ無いしな〜。無 駄骨【むだぼね】かよ」 6a_06「お前、人の話聞けよ。さっさとソレ殺っちまって、ずらかろうぜ」 6b_06「ま〜、そ〜だな。くそっ、持ってると思ったんだけどな〜」 エリアの6男aがセイとルカに近づく。 セイM_21「―――何。わからない。剣って何。わかんない」(かすれ声で) 6a_07「おとなしくしてろよ、ガキの叫び声はキンキンする。俺の嫌いな物の1つよ」(ニヤ ニヤ笑いながら) セイM_22「……赤く……赤い血……全然動かないジーク…………そうだ、ジークは死んじゃっ たんだ…………お母様が、昔飼ってた鳥が全然動かなくなった時言ってた……“ 死んでし まったのよ ”って。一緒に土に埋めて、もうあの綺麗な鳴き声が聴けなくなって……」 チャキ、と男が剣を抜く。 セイM_23「……ジークが死んだのは、コイツのせい。そして……そして次は、僕だ。僕とルカ。 死ん、じゃうんだ……何も知らないのに、わからないのに…………怖い……怖いよ、こんな の変だよ……っ」 6a_08「じゃーな」 剣が振り上げられる。 セイM_24「赤い……赤い、剣。声が、声が出ない。出せ、ない……っ」 その瞬間、パアアアァァ、と辺りを包むような光。 6a_09「な……ッ!何だよこの光、眩しくてガキが見えねぇ!!」 6b_07「ちょっと待て、誰かいんぞ!オイ、お前ら誰だ……!!」 セイM_25「誰か……って、誰……?影が、2つ……2人……?けど、何か、凄く………周り、 が…遠、い…………」 セイ、影を確かめられぬまま気を失う。 1話終了 < 戻 > |